新型コロナウイルス感染症対応に見る「政府の危機管理(CRISIS MANAGEMENT)」

新型コロナウイルス対応と東日本大震災の対応比較

 

 私がこの長―い文章を書き始めたきっかけは

政府に危機管理の意識があるのか」という素朴な疑問 からです。

 ブログの初稿に政府のこの4か月の対応を載せ、次にTDR東日本大震災の時の対応を載せたのも、政府の対応が場当たり的な感じがして、戦後最大の危機に対して我が国がこれからどう進んでいくのか、政府に国を、国民を守る意思があるのか見えてこない不安を感じたのです。

緊急事態宣言が解除されましたが、これからが勝負です。

今なすべきことは

1、感染拡大終息に向けて、防止策を打つこと

 ・・・薬、ワクチンの開発、検査体制の充実、医療体制の充実、

2、国民生活を守ること

 ・・・持続化給付金、雇用調整助成金特別給付金の充実、雇用の安定、

3、中小企業を守り、経済の軌道を回復すること

                               につきます。

このことはあちらこちらの新聞でも見かけますが、具体的に何も進んでいません。

スピード感が無いと思うのは私だけでしょうか。

 

「この新型コロナとは長い戦いになる、新生活様式を取り入れて」と言いますが、その先はどうなるのでしょうか。「3密を避ける」「ソーシャルディスタンス」「手洗い・マスクの徹底」これらを徹底していて、生活が元に戻るのでしょうか。経済が元に戻るのでしょうか。

不安を抱えたままの今の状態で、経済が回復するとは到底思えないのです。

企業は将来ビジョンを描けず、国民も将来の生活設計が描けない、成り行きに任せ、取り敢えず目の前の危機が去ればと思っていたら、いつの間にか国も生活レベルも沈みかけていた、いや、沈んでしまったなんてことになりかねません

 

今政府に求めたいのは数年先を見据えた「優先順位を考えた具体的な目標の設定」と「強力なリーダーシップ」です。また、私たち国民も国が掲げた目標達成に向けて協力し合い、行動することです。

 

結論めいたことを書きましたが、

危機管理という側面から東日本大震災の時の菅さん(当時民主党、首相)の対応と今回の安倍さんの対応を比較してみたいと思います。

 

1、東日本大震災の時の政府対応

 

 東日本大震災はM9、最大震度7を観測したともいわれ、あの時点では世界第4位の規模でした。当時は民主党政権下、菅首相が対策本部長になり必死に動いている感じがしました。しかし、当時の対策本部(?)は3者体制で動いていて、記者会見しても、何が真実なのか、現状どの様な状況なのか、よくわかりません。本来は内閣がリーダーシップを発揮しなければ、この国難、最大の危機を乗りこけることができないのに3者のバラバラ感は私たち国民に伝わってきました。

 内閣府は「国民に不安を抱かせないように安全を強調」、東電は以前から拙いことは隠そうという隠ぺい体質(関係者の方には申し訳ありません。あの時、必死に福島の現場で戦っている方々がいらっしゃいましたが、過去における幾つかの事故の隠ぺいを見聞きしてそう思ってしまいました。勿論今は違うと思います)、原子力安全保安院(当時)はやはり日本の原子力は安全だという立場にいて、目の前に起きている不都合な事実を知らせたくない、責任を取りたくないという心理が働いたのではないかと思います。おまけに当時の民主党は無駄遣いを一掃すると「予算のぶった切り」をしましたから、各省庁との関係が悪化していましたので、それだけではなく、民主党は、脱官僚政治を唱えていて、お役人に使われる政治家でなく、政治家がお役人を使えるようになりたい、という意識が強くて反感を買っていましたので、緊急時にお役人が動いてくれません。対策本部長の菅さんは対策本部に詰め、現地に行ったり、動いてはいるのですが、リーダーシップが取れず、福島第1原発事故の初期対応の拙さ、情報開示の遅れ、と初動体制が思うようにいかなかったのだと思います。チェルノブイリが世界への情報開示が遅く非難を浴びましたが、日本の対応も過去の教訓に学べていなかったと思います。

 

 危機管理下の情報開示は「正確に、早く」が大事だと言われますが、当時「これは正しい情報なのか」「情報を隠しているのでは」「説明不足」と疑問を抱かせる結果になってしまいました。

 

当時の政府の対策として、

  1. 避難地域の設定・避難所の設置・仮設住宅の建設
  2. 計画停電の設定・準備
  3. 復興構想会議の設置
  4. 補助金の支給・農業被害の補償・雇用調整助成金
  5. 原子炉格納容器冷却(炉心溶融

                         が挙げられていました。

 

 この(1)~(5)の対策については、痛手を被った農業・漁業他の補助金や補償金は遅い感じがしましたが、実行できていると思います。ただ、炉心溶融だけは今も解決がつけられず、時間を要しています。いずれにしろ、民主党、菅さんの支持率は震災が起きて、初めの3ヶ月はまだ低いながらも維持できていましたが、4ヶ月過ぎると10%台に大幅に落ちていくことになります。この支持率低下の理由は2つ挙げられます。

一番の理由は「スピード感に欠けていた」の一言です。菅さんは一生懸命動いている感じがするのですが、言っていることが実態に結び付かないのです。補助金、補償金、助成金ついては震災の半年後、に動き始めます。あと一つは「真実を知りたい国民に真実を伝えられているか」「内閣が国民のために動こうとしているのか、」を国民が注視しているのに、「国民から信頼されていない」この2つです。

 

2、新型コロナウイルスの安倍さんの対応、

 

詳細は初稿に乗せた通りですので省きますが、私は初動体制においては比較的早かったと思います。1/28には指定感染症に指定、武漢邦人救出のためのチャーター機も用意しています。1/30にはWHOが新型コロナ感染症について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言するや否や、政府は「感染症対策本部」設置しています。中には初動も遅れている、12月の武漢での騒ぎを知っているのだから、もっと早くできたはずという方もいますが、定石は打っているのです。

それが何故、全てが後手に回っていったのでしょうか。原因は二つ考えられます。

一つは「いかにオリンピックを開催させるか」が念頭にあり、WHOのいう新型コロナのパンデミックを真剣にとらえていなかったことが挙げられます。

もう一つは「中国の最高指導者、習近平国家主席の来日」という国家行事があり、この二つを成し遂げたいという思いが強かったのでしょう。

そちらに気持ちが集中していたため、この新型コロナの感染力を見くびり、こちらは副対策本部長の加藤さん、西村さんに任せておけば大丈夫だと思っていたのかもしれません。ここまで世界を揺るがす大災害になるとは思っていなかったのだと思います。

 

緊急事態宣言発令のタイミングはいつ頃良かったのでしょうか。

発令が遅すぎたという意見もありますが、結果論的な私の意見です。

 

  1. 最善策・・・1月30日、「対策本部」を立ち上げた時
  2. 次善策・・・2月26日、「3/2からの全国の小、中、高校スペインを春休み迄臨時休校する」と突然の要請があった時
  3. 遅くとも・・・3月14日、特措法が成立したのが13日、施行が14日

 

(1)(2)については、スピード感を重視したら、当然出てくるタイミングですが、緊急事態宣言をするにしても法改正が必要だということを知らない私の素人的考えですので、やはり現実的には(3)が妥当な線だということになります。

安倍さんには当時、新型コロナウイルス感染症についての様々な情報が入っていたはずです。このままでは拙いことになるという漠とした不安感を抱えていたのではないか推測できます。だからこそ、2/25にはクラスター対策班を立ち上げ、この感染症を水際で防止しようとしたり、2/26のような何の前触れもないまま突然「3/2から全国の小、中学校を春休み迄臨時休校する」と言ってみたり、3/5には、中国の習近平国主席の来日が中止になった日の夕方には「中国、韓国からの入国強化」を発表しました。そして3/10には「特措法改正案」を提出、いつでも緊急事態宣言を出せるようにしたのだと思います。なにもしていない訳ではなく、手を打ってはいるのです。ただ、あのころ、記者会見も新型コロナウイルスのことより、東京オリンピック開催のことに時間が割かれていたように見受けられます。世界的に見ても、3月上旬にはスペイン、フランス、イギリス、アメリカ・・・地球規模に拡大しさらに増えるであろうとWHOが警告を出していますし、中旬には欧州がパンデミックと日本でも報道されているのにタイミングが悪すぎです。

 

私は遅くとも、改正特措法の施行日の3月14日に緊急事態宣言を出せていたら、安倍さんの評価も変わったと思います。またこのウイルスの2週間の潜伏期間を考えますと、4月以降の状況も大きく変わっていたのだと思います。

 

 その点スピード感あったのは小池さんです。彼女もオリンピック東京開催の当事者ですが、3/24、安倍さんとIOCのバッハ会長が電話会談で「東京五輪を2021年夏まで延期する」と決定した翌日には、緊急記者会見で「今の状況は感染爆発の重要局面だと強調、週末の外出自粛要請、3密を避けるよう」都民に要請しています。小池さんは2月末から積極的に記者会見を行い都の対応を逐次報告をしています。また、今回は北海道の鈴木知事、大阪府の吉村知事の対応が目を引きました。お二人の真摯な対応の姿に安心感を持たれた方も多かったはずです。私はお二人に非常時のトップのあり方見せていただいた感じがします。

 

こうしてみますと安倍さんは必要な方針は打ち出し、対策はやってきていると見て取れます。それなのに何故支持率低下に繋がっていったのでしょうか。

 

これは私が記者会見の時に感じたことですが、

 

  1. 棒読みで自分の言葉で話していない
  2. 総論では良いことを言っているが、細かいことは部下任せ
  3. 各省庁と地方自治体との連携が上手く行っていない

 

このような緊急事態宣言時、小池さん、吉村さん、鈴木さんはご自分の言葉でお話をされ、それも細かいことにまで対応されている感じが伝わってきましたが、安倍さんは良いこと言っているのですが胸に響いてこないのです。肝心なことは西村経済再生担当大臣、加藤厚生労働大臣、お金のことになると他のお役人が出て、それも言い訳がましいことばかりで、この危機を乗り越えられるのだろうかと心配になります。

 安倍さんの政治は具体性が無く「スローガン」「空虚な理想」といった人がいましたが、私は一国の宰相はそれでも良いと思います。ただ。それを具体的に現わせる側近がどれだけいるのか、また作り上げるシステムや組織を持っているのかです。

「アベノマスク」もアイデアは良いのですが、細かい詰めがされていませんので不祥事続き、解除後に届く有様(私の場合?)で税金の無駄、10万円の特別定額給付金はオンライン申請でスピード感をもってすぐにでも届けるといいながら、オンライン申請を取りやめた郵送に切り替えた自治体が5割、申請はすぐにしたが未だに振り込みが無い(6/4時点で28%の給付率)、雇用調整助成金は手続きが煩雑で申請を断念する中小、零細企業も、と執行にスピード感を欠いた例が私の周りでは枚挙にいとまがありません。これらを見ていると安倍さんは自分の側近である各省庁の大臣に指示をすれば全てが上手く動くと思っているようですが、各省庁からの指示は出ても具体案は現場(各自治体)任せとなり、自治体は財源による体力の違い、よく言われる縦割り組織、長い間の慣習の違いから、どうしたら良いのか戸惑いながら作業をしているように見受けられます。私が普段関わる市役所や支庁では間違いを出してはいけないという意識からか、かなり慎重に作業をしている感じがしますので、税金であるお金を扱う部署では国がスピーディに給付しろ、助成しろと言っても慎重にならざるを得ないのはわかります。やはり国がきちんとしたガイドラインを示してあげることが大事だと思います。今回の一連の流れを見ていて、各省庁と各地方自治体のコミュニケーションが全く取れていないのがよくわかりました。もしかしたら安倍さんは裸の王様になっているのかもしれません。

 

【 東日本大震災の時の菅さんと新型コロナウイルス感染症対策の安倍さんの比較 】

政府に対する評価で面白いものがあります。支持率はどこの会社が調査したかで若干の違いが出てきますし、単純比較はできませんが、ある傾向としてみてください。

 

まず、東日本大震災の時の民主党菅首相に対する評価ですが、

支援に対する取り組みは「評価する、ある程度評価するが50%、あまり評価しない、全く評価しないが44%と別れていますが、政府の発表を「信用している26%、信用していない64%」という結果が出ています。ただ、内閣支持率は20%台、2011年7,8月を見ますと10%台に落ち込んでいます。当時、民主党自体の魅力が失われ、支持者が急減していた時でした。そのような中、取り敢えず取り組み姿勢は良いと評価され(?)、支持率が20%を維持していたものの、3ヶ月もして具体的な政策が中々進まなかったため、最悪の10%台に落ち込んでいます。完全に民意が離れていったのだと思います。実際に補償が始まったのは9月を過ぎてからだったように思います。

 

それでは新型コロナ対策の自民党安倍首相の対応はどうでしょう。

新型コロナ対策を評価する31%、評価しない57%、(この評価の多くは一向に届かない支援策、現金を挙げています。)、安倍内閣指導力を発揮していると答えた人30%、発揮していない57%、ほぼ同じ割合です。内閣の支持率で見ますと、支持率は33%、不支持は47%つい最近までは41%維持していたのですが、検察庁法改正案のこともあり、大きく落ちています。そして、ついに5月24日の報道では支持29%、不支持52%と危険水域に入ってしまいました。それでも民主党時代と比較すると若干良いものの、当時の不人気民主党と比べると大差ないように見えます。今まで盤石だった体制もここで力を抜くと大きく毀損する可能性を秘めています。私からすると今回のコロナ禍にあまり力を入れていないトランプ大統領の支持率は45%、これも支持率が低下し、民主党のバイデン大統領候補47%に逆転を許しています。

 

他の国はどうなっているのでしょう。

 

新型コロナウイルス危機への対応で各国首脳のリーダーとしての資質が問われる中、その対応ぶりから支持率が上昇する指導者と対応の拙さから支持率が下落する指導者との差が鮮明になっています。米調査会社の世界10か国の大統領、首相の支持率を調べた資料によりますと10ヵ国中7カ国の支持率は高水準をマークしています。

 

支持率が上がった主な国は、インドのモディ首相、オーストラリアのモリソン首相、ドイツのメルケル首相、カナダのトルドー首相、フランスのマクロン大統領、

彼等は「早期の外国人の入国禁止」「医療体制を充実し、致死率を低く抑えた」「罰則付きの外出禁止令」「新型コロナとの戦いを戦争と表現し強い決意を示した」ことが挙げられています。

さらに興味深いのは、

「ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領は深刻な影響を受けた国の支援のため、約58兆円「復興基金」をEUに提案した。」とありました。

私がすごいなと思うのは、今、各国が自国第一主義に陥り、他国へ支援協力する国が見当たらなくなってきている中、欧州は新型コロナの危機の各国の協調が十分でなかったと反省し、基金の立ち上げを提案したことです。そしてこのことはコロナの先へもう踏み出そうとしていることです。やはり良識ある国のリーダーなんだと感じました。

 

 断トツワーストワンは残念ながら我が安倍首相です。次にブラジルのボルソナーロ大統領、そしてトランプ大統領と続き、不人気3人衆といわれる始末です。

あくまで新聞報道の聞きかじりですが、この3人の共通点を見てみたいと思います。

まず、トランプ大統領です。5月6日の時点で、政界一の感染者数を出しているにも関わらず、大統領直轄の対策本部の解散(数週間以内に)を打ち出しています。そして、マイクペンス副大統領が「早期に経済活動を再開したい」と発表していますが、連邦緊急事態管理局(FEMA)は6月までに、毎日3000人以上がウイルスで亡くなると予測している中での発表です。また、保健当局は今後も感染拡大の恐れがあると声を上げています。感染者数第3位(25万4千人、死者1万7千人、5/18)のブラジルのボルソナーロ大統領は「新型コロナウイルスはちょっとした風邪」「外出は経済を壊す」と言って憚らず、明確に経済優先の立場をとっています。

我が安倍さんはどうでしょうか。対策本部の立ち上げ、ダイヤモンド・クルーズ船の対応ぐらいまでは内容は別として、スピード感はそこそこだったと思います。しかし、オリンピックのことがあったせいか、動きが単発で方針は出すものの、後の対応は現場任せ(各都道府県、市町村)の感が否めませんでした。結果として、全てが後手になっていったように思います。当初西村さんが前面に出てきたように経経済生とコロナ終息を同時にできると思ったのかもしれません。それが経済再生一辺倒のお二人とは違ったもののコロナ対策が中途半端になったと思います。

「何よりも大事なのは命だ」とブラジルの国民が言っていましたが、それはどの国でも同じです。この「国民の命よりも経済活動を優先している」と思われかねない発言や対策の数々が支持率低下の原因であるのは間違いありません。私は当初、安倍さんは対応が早く良いなと思っていましたが、その後様々な対応の拙さが見えてきました。それはコロナ感染症対策の政府の対応の個所で、評価したとおりです。

 

安倍さんの支持率低下の理由を、纏めると、

(1)コロナを終息させることを最重要課題としていたのではなく、東京オリンピックパラリンピック開催を気にし過ぎ、全てが後手に回ったこと   

(2)官僚の書いた原稿の棒読みで、国民に気持ちが伝わってこないこと

(3)以前は「私が総理大臣だ。だから私が何でも決める」かのような態度が、最近は自ら決めずに「党、専門家会議の意見を聞いてから」と、いざとなったら責任転嫁し始めたように見えたこと、     この3つが挙げられます。

 特に国民から、誠意がない、真剣じゃない、そして言ったことが実行されない、そんな風にとられたのではないかと思います。

 

こうしてみますと、菅さんと安倍さんの支持率を落とした理由は状況は大きく違うけど似ていると思いませんか?

 

  1. スピード感が無い
  2. 国民から信用されていない
  3. リーダーシップを発揮しているようで発揮していない

 

この3つはある意味、「危機管理時のトップに求められる要点」です。逆を返せば、

 

  1. 迅速な対応
  2. 誠意ある対応
  3. 自ら陣頭指揮を執ること

 冒頭の「政府に危機管理の意識があるのか」いう素朴な疑問にたいしては10年前と大きく変わっておらず、過去の教訓に学んでいないと言えると思います。

 

次回は国の危機管理体制がどうなっているのか?

どうあったら来るべき危機に対応できるのか?

                    もう少し掘り下げてみたいと思います。