ディズニーでは何故、「いらっしゃいませ」という言葉を使わないのか?

これには涙ぐましい努力がありました^^

広く、サービス業、流通業、ホテル・レストラン業で使われてきたこの言葉、私がこの世界に入った時には接客5大用語、7大用語には必ず入っていて、誰もが言えるようにと教育されたものでした。今でもこの言葉も持つ意味は絶大なものがあります。

 

それがディズニーの開業時には「‟いらっしゃいませ“に何の意味があるのか?ディズニーはゲストとの会話を重んじる世界、いらっしゃいませと言った瞬間から会話が途切れてしまう。会話が続くように朝なら‟おはようございます”、夜なら‟こんばんは“というように!!」というフィロソフィーの指針が出てきました。

さあ、現場部門では大慌て、アトラクションでは大きな問題もなく受け入れられてきたが、飲食施設、商品施設では中々長い間に染み付いた習慣が出てしまい、中々受け入れられずにいました。

ですから、飲食施設では妥協案的に「いらっしゃいませ、おはようございます」、「いらっしゃいませ、こんばんは」と初めの1、2年は言っていたように記憶しています。特にできないのが、現場経験の豊富な店長たちでした。教える側が体に染みついて、納得していないために、結構時間がかかってしまったのです。今のように「こんにちは、今日はお暑いですね!」「おはようございます!雨の中ありがとうございます。ごゆっくりくつろいでくださいね」と言えるようになったのは開業して3年ぐらいかかったのではないでしょうか。

 

また、これは日本のホテル・レストラン業には大きな影響を与え、ディズニーの開業以降、「いらっしゃいませ」と言わずに、ごく普通の日常の挨拶言葉「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」を使う企業が増えてきています。

 

いつだったか飲食業の吉野家もマニュアルから「いらっしゃいませが消えた」という記事を見ました。新しい業態の店で、会話を促す必要が生じたからということでしたが、やはり1年半、かかって徹底したと社長が仰っていました。吉野家は色々な意味でお手本にすべきことが多い企業です。あの「うまい、やすい、おいしい」の標語はその最たるものです。吉野家の業態は「1分以内に食事を提供する‟ファーストフード“」ですから、今まで会話重視ではなかったのだと思います。ですが、これからの飲食業、流通業、テーマパークを含めた全てのサービス業は会話が大事な商品になります。早く?!気が付いて良かったと思います。

 

余談ですが、昔は日本の飲食業界やエンターテイメントの世界では出社時には昼であっても、夜であっても、「おはようございます」と言わなければなりませんでした。それらの世界では昼から夜にかけて仕事をする業種だったからです。ですから、ディズニーのエンターテイメントの世界に生きてきた人たちにとってもこの習慣となっている挨拶を変えるのはゲストに対してだけではなく、キャストに対しても大変だったのではないかと推測しています。今はどうなっているのでしょうか?でいつか関係者に確認してみようと思います。

 

先日、NHKの「チコちゃんに叱られる」22’03‘18の放送を見ていて、「いらっしゃいませ」の語源について、明治大学齋藤孝教授が説明していて、改めて勉強になりました。それによりますと、「徳川家康東海道53次(江戸日本橋京都三条大橋)を整備し、数多くの宿、茶屋が生まれたところから江戸中期から後期にかけて広まった」とありました。浮世絵師の歌川広重の「旅人留女(たびびとどめおんな」の絵にも客引きの様子が出てきますが、当時は東海道492kmに3000もの宿があり、名古屋の熱田区宮宿には熱田神宮があったせいでしょうか、284軒の宿があったそうで、相当な客引き合戦が繰り広げられていたと想像できます。それ以前は「おいでなさいまし」が一般的でしたが、これでは丁寧だが活気が無い、「いらっしゃいませ」の方が声高に叫ぶことでアピールできると考えたのでしょう。

「いらっしゃる」は来る、行く、いる、の尊敬語、それに丁寧の助詞「ます」の命令形「ませ」が付いてできたというのです。

 

いらっしゃる」⇒「いらっしゃり+ます」⇒のイ音便化・ますの命令形ませ⇒「いらっしゃいませ

 

確かに説明されると呼び込みの言葉だったと理解できます。今では元の意味を意識することなく挨拶の言葉として定着しているのがよく分かります。そしての接客コンテストの優勝者は「お客様の存在を意識していますよ」「いつでもサポートできますよ」という意思表示と考えていると言っています。私としてはどちらでも良いのですが、サービス業は益々、接客の中でも会話が重要になっていきます。客単価の高い、低いにかかわらず、お客様の意を叶え、来て良かった、又来たいと思わせられる接客をしたいものです。

 

21世紀、接客(会話)の重要性は益々増しています。